パスタを茹でている間に

・村上春樹作品について、偏見たっぷりに独自の読み方で考察しているブログです。・基本的に「テーマは何か?」の結論から書き始めますので、ネタバレです。・ただし、未読の方に対する配慮として、あらすじは省略しています。・断定的な表現で文章に不快感を持たれる方もいらっしゃると思いますが、「言いきる」ことを目標にしています。・ご了承ください♪

考察・村上春樹著『木野』 村上春樹的メタファーとプロット

短編集 村上春樹著「女のいない男たち」より『木野』を考察します。しかし、今回は考察に失敗しており、著者の主題を見つけることが出来ませんでした。もう少し時間をかければ何とかなったかもしれませんが、この作品を読んでいると別のことに気を取られて、違うことを書きたくなってしまったことも理由のひとつです。

 

全力考察『木野』 ザグレウスの心臓

未完成に終わった『木野』の考察を別記事で再挑戦しました。

 

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四段プロット あらすじの代わりに

  1. 主人公の木野は、スポーツ用品を販売する会社に17年勤める39歳の男性で、ランニングシューズの営業を担当していた。出張の多い仕事だったが、たまたま一日早く出張から戻ったときに、自分の妻が自分の同僚と浮気をしている現場を、自宅の寝室で目撃した。
  2. 木野はそのまま家を出て、翌日には退職届けを出した。木野には喫茶店を経営している独身の叔母がいて、かわいがってもらっていた。三ヶ月前、木野は叔母から、伊豆のマンションに隠居するから店を引き継いで欲しいとの相談を受けていた。木野はそのときは断ったが、そこでバーを開こうと思い叔母と連絡を取った。木野は貯金の半分を使いバー「木野」を開店した。その頃木野は、妻や同僚に対する怒りや恨みを感じなかった。木野は自身の「重みを欠いた心」が移ろっていかないように、バーを心地よい空間に変えていった。
  3. 人間よりも先に一匹の野良猫が「木野」の居心地の良さを発見し、出入りするようになった。野良猫をきっかけに段々と客が集まるようになり、常連客も付き始めた。トラブルを起こした厄介な一見客を対処してくれた神田(カミタ)や、顎髭の男とその連れの女も常連客だった。ある日、連れの女が一人で店に訪れ、木野はその女と寝た。その女の体には、たばこの火を押し付けた無数の火傷痕があった。しばらくして、妻との正式な離婚が決まり、別れ際に木野は、妻の体に無数の火傷痕を想像して首を振った。彼の態度を誤解した妻は、「ごめんなさい」と彼の手に優しく自分の手を重ねた。
  4. その頃を境に、猫がいなくなり、代わりに蛇が姿を見せ始めた。叔母に相談すると、「蛇は良くも悪くも両義的に人を導く存在だ」と教えてくれた。そして、神田があらわれ「店を閉め放浪せよ」と促す。木野は言われるままに店を閉め、まずは四国に向かうことにした。途中、神田の指示通りに叔母宛にメッセージ抜きの絵葉書を送りながら宿を転々とした。しかしある日、重みを失くし、透明感を強めていく自分に耐えきれなくなり、絵葉書にメッセージを添えてしまう。その日の夜、「秘密の場所に心臓を隠す賢い蛇」が、木野の空っぽの心の中に「蛇の心臓」を隠そうとやって来る。木野はその恐怖に耐えながら、誰かの温かい手が自分の手に重ねられるのを想像した。
     

問題の抽出 村上春樹作品のプロット

村上春樹作品には、ある一定のパターンが見られます。

村上春樹作品のパターン

主人公は全否定される 

まず、奥さんに浮気されたり、友達に絶縁されたり、人格否定されます。

主人公は受け入れる

 「自分のどこが悪いのか?は分からないが、何かしら欠けているものがある。」と主人公はその批判を無条件に受け入れます。

都合の良いセフレが登場する

 「分からないものを分からないままにするのは良くない」と主人公に行動を促します。また、著者の作品では、「具体的な目的を持ち主体的に行動する主人公」ではなく、「事件や出来事に巻き込まれる主人公」が主なので、物語を前に進める役割を担当する登場人物が出てきます。導き役です。

村上春樹的メタファー

 「現実の世界で、主人公の周りで起きる事件や出来事」
 をメタファー(暗喩)に、
 「主人公の心の内側にある問題」を描こうとしています。

主人公や登場人物が成人の場合

 主人公を含めた登場人物が大人の場合、自分が心に抱えている問題が明らかになったとしても、解決には至りません。

主人公や登場人物が未成年の場合

 大人が自身の問題と向き合うことで、子供たちが将来向き合うであろう困難を先取りし、子供たちを守ろうとします。

 

 

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関連する作品 両義的な蛇 風を可視化する柳

 猫、柳の木、蛇など、キーワードが盛りだくさんですが、今回は蛇と柳について考えてみます。

両義的な蛇

 まず、蛇について、ポジティブなイメージを持つかたは少数だと思いますが、古代ではポピュラーな信仰対象でした。特に森の近くで生活していたような頃は、人間を死に至らしめる蛇は、畏怖の対象として世界中で選ばれたトーテムでした。
 ツタンカーメンの黄金のマスクには、王族の象徴であるコブラが装飾されています。なので、ユダヤ教にとって蛇は悪魔の象徴です。出雲系には蛇神(海蛇)もいましたが、ヤマタノ大蛇退治によって、蛇信仰は高天原系により改編されました。
 「おそらく」としか言えないのですが、古代には蛇信仰が世界中にあり、また、その証拠に蛇退治の神話が多数あります。これが、蛇信仰が人身御供を要求するオドロオドロしい原始的な宗教だったことと、狩猟採取から定住社会に向けて、「呪術信仰が廃れていった(弾圧を受けた)」というのはあくまで私の想像です。
 また、豪雨や台風による、河川の氾濫は甚大な被害を与えると同時に、山の肥沃な養分を里にもたらす恩恵もありました。これが両義的の意味です。

 

 

東西の蛇信仰と蛇殺しの神話が調べられています。こちらの著者も想像の域ですが、個人的には好きで面白い本でした。(もちろん、著者の主張の根拠や裏付けは示されています。)

 

風を可視化する柳

やなぎの意味についてはこちらの記事をどうぞ。

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未完成考察

『木野』は村上春樹パターンが良く現れていたので選んだのですが、結局そちらがメインになって考察できませんでした。『木野』の考察はまたどこかでやりたいと思います。木野が定住できなくなったのは面白かったのですが。

 

まとめ

 本当は話題の『ドライブ・マイ・カー』をやろうかと思ったのですが、どうしても『木野』をやりたくなりました。でも、結局は脱線してしまいました。